【管理栄養士】離乳食の進め方と食物アレルギー

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コラム

近年増加し続ける「食物アレルギー」。離乳食を進めていくにあたり、「〇〇は食べさせていいのか」、「〇〇は遅めに食べさせたほうがいいのか」など、気になる親御さんもいらっしゃるかと思います。今回は、食の専門家【管理栄養士】の川島美由紀さんに食物アレルギーの最新情報と離乳食の進め方について教えていただきました。

【管理栄養士】離乳食の進め方と食物アレルギー2022
 

食物アレルギーとは?

食物アレルギーは、特定の食物に含まれるアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)に免疫機能が過剰に反応して、それを食べたり、触ったり、吸い込んだりして体の中に入った時に、湿疹やくしゃみ、咳などの症状が現れる状態です。
症状には再現性があり、1回食べただけで口の周りに発赤が出たからといって、食物アレルギーとは判断できません。

医師が実際に食べた食品の内容を問診し、血液検査で特異的IgE抗体検査や皮膚プリックテストによって原因食物を推測し、必要であれば食物経口負荷試験を行います。正しい診断のためには、医師による判断が基本になります。

食物アレルギーの現状

平成29年の即時型食物アレルギー全国モニタリング調査結果によると、全年齢における原因となる食物は、鶏卵(34.7%)、牛乳(22.0%)、小麦(10.6%)の順に多いです。

年齢別新規発生の原因食物は、0歳児では鶏卵、牛乳、小麦の順に多く、1、2歳児では鶏卵の次に魚卵類、木の実類が多くなります。
3~6歳では、木の実類、魚卵類、落花生の順に多く、加齢に伴って食物アレルギーの原因が変わっていくという特徴があります。最近では、特にくるみを含む木の実類の発症が増えてきています。

年齢ごとに有症率は異なり、乳児で最も高いですが、乳児期に多い鶏卵、牛乳、小麦などは耐性を獲得していくことから、小学校入学前までに治ることが多いと報告があります。

食物アレルギーの現状:お母さんに離乳食を食べさせてもらっている赤ちゃん

食物アレルギーのことを不安に思い、離乳食を与えるタイミングを先延ばしにしてしまうと赤ちゃんに必要なエネルギーや栄養を補完することができません。
初めての食材を与える時は次のことに気をつけて進めていきましょう。

  • ✓平日、日中に与える。(万が一、アレルギー症状が出ても医療機関に受診ができるようにするため)
  • ✓赤ちゃんの体調が良い日に与える。
  • ✓赤ちゃん用スプーンひとさじから与える。
  • ✓赤ちゃんの様子を見ながら無理のないペースで与える。
  • ✓月齢にあった食材を順番に、初めての食材は1日1種類から与える。

食物アレルギーの現状:月齢別食材進め方表

アレルギーかな?と思ったら

食物アレルギーの症状には、皮膚症状(じんましん、まぶたや唇の腫れ、顔全体が腫れるなど)、消化器症状(嘔吐や下痢など)、呼吸器症状(鼻水、くしゃみ、声がかすれる、息苦しそう、ゼーゼーする呼吸など)、循環器症状(唇や爪が青白いなど)、神経症状(ぐったりする、意識がもうろうなど)などがあります。

初めての食材を与えた時に、食物アレルギーが疑われる症状があらわれた場合は、自己判断せずに必ずかかりつけの小児科医を受診し、食べた食材、症状、出た時間などを伝えましよう。皮膚症状や消化器症状であれば写真を撮って持参するのも良いと思います。

離乳食の開始は遅くするべき?

最近の研究では、特定の食物の摂取を遅らせることにアレルギー予防効果があるという科学的根拠がないことがわかっています。食物アレルギーの発症を心配して離乳食の開始を遅らせたり、必要以上に除去を行ったりせず、生後5~6か月ごろから月齢にあった食材を少量ずつ与えるのが良いでしょう。
しかし、湿疹がある赤ちゃんの場合は食物アレルギーの発症リスクが高いことが知られています。この場合も自己判断で開始を遅らせるのではなく、かかりつけの小児科医を受診し、離乳食の開始について相談しましょう。

離乳食の開始は遅くするべき?:お母さんに離乳食を食べさせてもらっている赤ちゃん

乳児期の食物アレルギーで多い「卵」「牛乳」「小麦」を与える時の注意点

乳児期に多い「卵」・「牛乳」・「小麦」を与える時は、以下の点に注意して与えると良いと思います。

●「卵」

卵に含まれる「たんぱく質」は、卵黄よりも卵白に含まれるたんぱく質が原因で、アレルギー症状が出る場合が多いと言われています。
そのため、初期に与える卵は、固ゆでした卵黄のみを赤ちゃん用スプーンひとさじから与えます。固ゆでする理由は、食物アレルゲンの大部分が食物に含まれるたんぱく質だからです。長時間加熱して固ゆですることで、たんぱく質が変性することにより、アレルギー症状が出にくくなることがあります。

全卵が食べられるようになるのは、卵黄を何回か試したあとに固ゆでした卵白を赤ちゃん用スプーンひとさじから与えましょう。
半熟卵や生卵などの熱が入っていない卵は、食中毒の危険が心配になりますので3歳以上になってからにしましょう。

●「牛乳」

牛乳は、離乳食中期ごろから調理用として少量ずつから与えます。パンがゆやシチューなどに使用しても良いと思います。飲み物用としては、鉄欠乏性貧血の予防の観点から1歳すぎてから与えましょう。

●「小麦」

小麦は、10倍がゆが上手に食べられるようになってきた離乳食中期ごろ、うどんやそうめんからはじめると良いと思います。パンで試しても良いと思いますが、パンにはバターなど小麦以外が入っているものもあります。アレルギー症状がでた時に原因物質が小麦でない可能性もあるので、小麦・塩・水のみでできているシンプルな麺類で試すと良いでしょう。

まとめ

離乳食を進めるにあたり、食物アレルギーが「心配だから」「念のため」という理由で離乳食を遅らせてしまうと、赤ちゃんの成長に必要な栄養素が不足してしまいます。自己判断せずに心配があればかかりつけの小児科医や行政の保健師・管理栄養士に相談しながら進めていきましょう。

【参考文献】
  • ・国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)「食物アレルギーの診療の手引き2020」
  • ・医歯薬出版株式会社「新版 食物アレルギーの栄養指導」
  • ・東京都アレルギー情報navi.(https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/allergy/search_allergy.html
  • ・厚生労働省 「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」

筆者紹介

コラム筆者アイコン
川島美由紀
  • ・管理栄養士
  • ・日本栄養士会公認 食物アレルギー分野管理栄養士
  • ・中医薬膳師
保育園向け給食支援サービスを提供する会社にて食育コンテンツ開発に携わりながら、保健センターでの乳児健診、1歳半・3歳児健診時の栄養相談、離乳食指導、食品メーカー様向けレシピ開発、コラム執筆などで活躍中。

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