
指しゃぶりをすると歯並びが悪くなる、やめた方がよいなんてお話耳にしませんか?今回は、歯並び育児協会®の歯科衛生士山上あかり先生に月齢ごとの指しゃぶりの意味や、やめられない時の具体的な対処法について、教えていただきました。

- 山上あかり先生歯並び育児®︎協会マスター講師・歯科衛生士
- 2015年 愛知学院大学 歯科衛生学科卒業。卒業から産休育休をまたぎ、8年間歯科医院に勤務。
「歯並び育児®講座」の講師として、自然できれいな歯並びを目指す子育て習慣を広める活動や5歳までの歯並びに悩みを持つお子様への歯並び育成のサポートも行う。「矯正の必要のないきれいな歯並びの育成を日本の子育ての常識にしたい」思いで子育てが楽しくなるように発信中!
「うちの子、指しゃぶりがやめられない…」「このままだと歯並びが悪くなるって本当?」
子育て中のママ、パパから、このようなご相談をいただくことは本当に多いです。今回は、指しゃぶりに対するママ、パパの悩みに寄り添いながら、月齢ごとの指しゃぶりの意味や、やめられない時の具体的な対処法について、お伝えしていきます。
指しゃぶりについて知ることで、不安が少しでも軽くなり、お子様の健やかな成長を心から応援できるようになることを願っています。

月齢別!指しゃぶりの役割と対応
指しゃぶりは、お子様の発達にとって大切なサインです。まずは、月齢ごとの指しゃぶりの意味を深く知り、ママ、パパがどのように見守れば良いかを知っておきましょう。
生後すぐ〜5ヶ月頃
赤ちゃんにとっての指しゃぶりは、「最初の探検」です。自分の手の存在を知り、指をしゃぶることで口の周りの感覚を学び、手と口の協調運動を育んでいきます。これは、母乳やミルクを上手に飲むために、とても大切な発達過程です。この時期は無理にやめさせる必要はまったくありません。むしろ、成長を促す大切な行動として温かく見守ってあげてくださいね。

6ヶ月頃〜1歳半頃
離乳食が始まり、お口の機能がより複雑になる時期です。この頃の指しゃぶりは、安心感を得るための行動や、歯が生えることによる歯ぐきのむずがゆさを和らげるために見られることが多いです。特に、眠い時や、環境の変化で不安になった時に、お母さんのおっぱいに代わる心のよりどころとして指をくわえることもあります。お子様の様子をよく観察し、指しゃぶりの根本的な原因(眠い、不安、退屈など)を探ることが大切です。無理に指を抜くのではなく、おもちゃで気を逸らすなど、優しく関わってあげましょう。

1歳半以降
歩行がメインになり、言葉を覚え、自己主張がめばえるこの時期の指しゃぶりは、心の安定を保つための可能性や、身体の問題で指しゃぶりをしてしまう可能性もあります。頻度や強度に注意が必要ですが、「おしゃぶりをやめること」がゴールではありません。 なぜ指しゃぶりをしてしまうのか、その根本的なところ(呼吸トラブル、バランス感覚の弱さ、姿勢の問題など)に目を向け、本質的なアプローチを考えていきましょう。
指しゃぶりと歯並びの関係
「指しゃぶりで歯並びが悪くなる」というのは本当でしょうか?結論から言うと、指しゃぶりは期間や強さ、お口の機能などが重要になります。
指しゃぶりをしていても、正しいお口の機能を獲得しておくことが大切です。なぜなら、乳歯の時期はあごの骨もまだ柔らかく、指しゃぶりの力がかかっても、卒業できれば元の状態に戻ろうとする力が働くからです。
しかし、長期間(3歳以降)にわたり頻繁で強い指しゃぶりは、大人の歯が生えるスペースやあごの骨格に影響を与え、上顎前突(出っ歯)や開咬(奥歯を噛んでも前歯が閉じない状態)などのかみ合わせの問題の原因になる可能性が高まってきます。指を吸う力が、上あごを内側に狭めたり、前歯を前に押し出す力になってしまうからです。

「やめられない!」と悩むママ、パパへ
「やめなさい」と何度言っても聞いてくれない。そんな時に大切なのは、お子様の心と身体をサポートするという視点です。例えば身体の問題が原因のひとつとなっている場合、その根本的な原因を探ることが大切ですが、いくつか取り入れてみてほしい対策をご紹介します。
1.身体を緩めること
身体に力が入りやすい子は、無意識に指をしゃぶることでリラックスしようとします。まずは、背中を中心に優しくマッサージしてあげましょう。背中マッサージやバスタオルハンモック、Cカーブ抱っこなどは、筋肉の緊張を解き、リラックスした身体の状態をつくることで、指しゃぶりに代わる安心感を得やすくなります。

2.身体の左右差を縮めること
子どもは発達の過程で、「利き手」や「利き足」の片寄りが強くなりすぎると、身体のバランスをとるために無意識に指しゃぶりをすることがあります。大人がいつも同じ抱き方をしていないかチェックすることも大切です。日常の動きの中で左右差を整えることが、安心感のある身体づくりにつながります。
3.舌の正しい位置を促すこと
舌のポジションが不安定な子は、無意識に安定させるために指を入れてしまいます。とくに、舌が上あご(スポット、画像の青丸部分)につかない子は要注意です。舌を動かしたり、舌を鳴らす、にらめっこするなどの遊びを通して、唇と舌の筋力をつけ、舌の位置の感覚を育てることで、指しゃぶりの代わりに口腔内が安定してきます。

4.感覚を入れる取り組み
指しゃぶりは、“触覚”や“圧覚”などの刺激を求める行動でもあります。手や口周りの感覚を刺激し、指の代わりに安心感や感覚の刺激を得られる方法を与えることが大切です。ねんど、スライム、泥遊び、田植え体験などのほか、お口のマッサージなどもぜひやっていただきたいです。
まとめ
指しゃぶりを無理に止めさせようとすると、子どもはかえってストレスが増してしまいます。大切なのは、「やめなさい」と責めるのではなく、「今、指しゃぶりが必要なサイン」と捉え、身体と心の土台を整えることです。
「やめさせる」から「自然に卒業できるように育てる」そのアプローチが、子どもの健やかな未来、そしてママ、パパの子育ての楽しさにつながっていきます。もし一人で悩んでいる場合は、お近くの歯科医院など専門家も頼ってみてくださいね。