「背中スイッチなぜ発動?」助産師解説|赤ちゃん寝かしつけのコツ

コラム

「背中スイッチなぜ発動?」助産師解説|赤ちゃん寝かしつけのコツ_01

赤ちゃん育児と産後ケアに特化し、地域に密着した活動を15年続けてこられたさら助産院院長の直井亜紀先生に「生後5ヶ月までの赤ちゃんの寝かしつけのコツ」について、教えていただきました。

はじめに

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このコラムをお読みになっているのは、「赤ちゃんがなかなか寝つかなくて大変!」と、日々がんばっているパパやママたちでしょうね。
まずは、ご出産おめでとうございます!
待ちに待った赤ちゃんとの生活なのに、「こんなに寝てくれないの?」「ベッドに寝かすとすぐに泣いてしまう…」と、戸惑うことが多いことでしょう。なかなか寝ついてくれないことで大人の生活リズムも整わず、睡眠不足で疲れが回復せず、中には手首や肩の痛みに悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、新生児~生後5ヶ月くらいまでの赤ちゃんの睡眠パターンや、背中スイッチが発動する理由、そして寝かしつけるコツについてお伝えします。

赤ちゃんがすぐに寝つかない理由

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「ようやく寝た…よし、そーっとベッドへ移動しよう…」そうやって寝かせたとたんに「ギャー!」。
これって背中スイッチ?!どうしたらスイッチオフにできるの?
「まじか…」「よし今度こそ…」「ギャー!」このように、腕の中で眠っていたはずなのに降ろすと泣いてしまう赤ちゃん。何度も繰り返すと大人もヘトヘトに疲れてしまいますよね。実はこれにはちゃんと理由があります。

0歳児は密着して包まれていたいのが本能

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「生理的早産」という言葉を聞いたことはありますか?
これは、動物学的な脳サイズで考えると、人間の赤ちゃんは他の動物より11ヶ月ほど早く生まれている「生理的に早産の状態」という意味で、体外妊娠中とも表現されます(※1)
四つ足動物である馬や牛などの赤ちゃんは、生まれてすぐにヨタヨタと立ち上がるのに、人間の場合は立てるまでに約1年かかることから、他の動物ならば胎内で過ごしている未熟な時期に生まれてくることを意味します。ですので、1歳頃まではお腹の中にいるかの如く密着して包まれていたい本能があるのです。赤ちゃんが抱っこから降ろされると「ギャーッ」と泣いてしまうのは、包まれている密着状態から離れることに気づくからなんですね。

まだ残っている野性の勘?で振動や音に敏感

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さらに、赤ちゃんには野生の勘が残っているという考え方もあります。
野生の動物は、常に危険と隣り合わせで生きています。生まれたばかりでも、外敵に食べられてしまうかもしれない、いつ襲われるかわからない…。そのため、「ガサッ」と少し音がするだけでも敏感に反応する習性が残っています。
人間の赤ちゃんも、そーっとベッドにおろされる時の振動や、ドアを閉める音を聞いただけで「ギャーッ」と目覚めてしまうのは野生の勘の名残りではないか、モロー反射(びっくりすると抱きつくように手を動かす反射)もこの「野性の勘」の名残りだと考えられています。

生まれたばかりは長時間寝ないのが当たり前

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よく「2時間しか寝ていないのにもう泣いている」「まとまって寝てくれないから心配」…そんなご相談をお聞きします。では、赤ちゃんは胎内にいたころはどんな睡眠サイクルだったのでしょうか。
赤ちゃんが胎内にいるときの最長睡眠時間は、たったの20分と、とても短いのです。20分間眠ったら20分間起きて、20分間起きたら再び20分眠る…そんな睡眠サイクルで過ごしていました。
このように考えると、生まれてきたばかりの赤ちゃんがまとめて寝ないのは当たり前のこと。「2時間しか寝ていない」ではなく、「2時間も寝られるようになった!エライ!」と考えると安心しませんか?

赤ちゃんを寝かしつけるコツ~テクニック&心持ち

では、どうやったらスムーズに寝かしつけられるのでしょうか。寝かしつけの「テクニック」と「心持ち」に分けて説明しますね。

寝かしつけの3つのテクニック

先ほど説明したように、赤ちゃんは「生理的早産」の状態のため、「抱っこされ続けている=包まれている」と認識することで安心して眠りやすくなります。つまり、パパやママのぬくもりを伝え続けながら寝かしつける方法が、背中スイッチを発動せずにすむテクニックなのです。

<1.抱っこと布団の温度差を少なくする>

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布団が冷たいと、「抱っこ(=包み込み)が終わった」と認識して目覚めてしまいます。そのため、あらかじめ布団を湯たんぽなどで温めておくことや、ブランケットで包みながらベッドへ移動することで、赤ちゃんは「抱っこされ(=包まれ)続けている」と認識して眠り続けやすくなります。

<2.ゆっくりとおろす>

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いきなり布団へ移動すると「抱っこが終わった」と認識するため、そーっとゆっくり抱っこからおろしていく方法です。具体的には、パパやママの体は赤ちゃんと密着している状態から、抱っこしている腕や手を静かに抜いていく方法がおすすめ。このやり方により、赤ちゃんに「抱っこされ(=包まれ)続けている」と認識するため、そのまま眠り続けやすくなるのです。
> 【背中にヒミツ】簡単にできる寝かしつけのコツ!

<3.ホワイトノイズ>
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ホワイトノイズとは、すべての周波数が同じ強度で雨音のようなノイズを指します。赤ちゃんが胎内で聞いていた雑音と似ており、この音を聴いていると安心して眠り続けやすくなります。ホワイトノイズと検索すると、YouTube配信などで見つかります。

寝かしつけるときの心持ち

しかし、いくら寝かしつけのテクニックを駆使したとしても、がんばって寝かせようとするほど眠らないこともあるはずです。その理由を、ちょっと自分の事として想像してみませんか?
では、「大人と赤ちゃん」ではなく、「男と女」でイメージしてみましょう(笑)。
結婚前に男女の夜を過ごすようになったときのこと。はじめのころはお互いが緊張してなかなか眠れなかったのに、次第に一緒に眠る夜が増えるうちリラックスして眠れるようになるはずです。
仮に、慣れていない時期に、「オレが眠るまでずーっと見守っているよ」と、ずっとそばで見つめられ続けたとしたら…きっと「圧」を感じて眠りにくい。しかし逆に、隣で寝息をたてながら眠っているのを見ていたら、つられて眠ってしまった…そんな経験をしたことはありませんか?

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赤ちゃんもこれと同じです。
大人が寝かしつけようとがんばればがんばるほど、焦れば焦るほどに「圧」を感じて眠ってくれません。しかし、大人も一緒に眠っていたら簡単に寝落ちすることがよくあります。これは先ほど「まだ残っている野性の勘」でも説明したように、「自分を守ってくれる存在が眠っている状況ならば、今は安全だ」と安心できるからなのでしょうね。
よく「寝かせつけようとしていたのに、うっかり先に眠ってしまった。ハッと気がついたら赤ちゃんも眠っていた」ことがあるのは、このような理由からなんですね。
このように、寝かしつけのマインドで大事なことはいたってシンプル。「大人が、がんばらない」「寝かせようと焦らない」なんです。言葉を話さない赤ちゃんには、大人の気持ちが見透かされているのかもしれませんね。

おわりに

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赤ちゃんとの生活では、いろんなことがドキドキで未知の体験の連続。
「この世に生まれたばかりの赤ちゃん」と、「はじめての赤ちゃんと生活するパパママ」という、いわば初体験どうしの関係なのだから、緊張するのは当然です。だからこそ「夜くらいはゆっくり眠りたい!!」と思うのも、いたって当然の願いです。

赤ちゃんは、「眠いのに、どうやって眠りについたらいいのか分からない」ことがあります。そのために、何をやっても「ギャーッ」となってしまうことがあるのです。しかし、生後5か月くらいまでの時期であれば、自分で動いてどこかに行くことはできません。だからこの時期は、環境を安全に整えてから大人が先に眠ってしまってもいいんです。
赤ちゃんを寝かしつけるコツは「大人ががんばらない」こと。
そんなゆるい気持ちで、がんばらないようにがんばってみてくださいね。

(※1) 「原人に生理的早産はあったか?」日本霊長類学会 霊長類研究 Supplement 2012

筆者紹介

コラム筆者アイコン
直井亜紀(助産師・べビケアセラピスト さら助産院院長)
「頑張る育児から楽しい育児へ」
ラクチンな姿勢の母乳育児・うたうベビマ・赤ちゃんが泣きやむ抱っこやおんぶ・産後の家庭訪問などなど、「ママの笑顔を増やしたい!」をモットーに活動中。今までに関わった人数は約50,000人。新生児から思春期の性教育まで、長い線で関わり続ける活動をしている。今までの活動を通して、東京新聞・読売新聞・朝日新聞・日経新聞・NHK・Yahooニュースなど、マスコミ掲載多数あり。内閣府特命担当大臣表彰「子供と家族若者応援団表彰」・母子保健奨励賞・内閣府家族の日優秀賞など受賞。著書は「思春期のわが子と話したい性のこと」「わが子に伝えたいお母さんのための性教育入門」など。
本質行動学エッセンシャルマネジメントスクールフェロー。合気道初段。
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