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“パパ育休”ハッピーに過ごすコツはママにある!?【助産院の現場から】

コラム
パパ育休夫婦のママに伝えたいこと【助産院の現場から】

赤ちゃん育児と産後のケアに特化し、地域に密着した活動を14年続けてこられたさら助産院院長の直井亜紀先生に教えていただく育児コラム5弾です。

はじめに

2022年10月に「産後パパ育休(出生時育児休業)」が創設され、男性の育休取得が促されるようになってからまもなく1年。今年7月の厚生労働省の調査では男性育休の取得率は過去最高の17%となり、育休を積極的に取得する男性が増えています。

助産院でお会いする多くのご夫婦を見ていると、パパ育休により絆が深まったご夫婦もいれば、残念ながらそうでないご夫婦もいます。ぎくしゃくした夫婦の話を聞いていると、「それはママ側にも原因があるんじゃないかな?」と思うことがしばしばあります。

せっかく夫婦二人で育児ができる社会制度なのだから、かけがえのない時間を過ごしてほしい。そしてこの先もずっと仲良しのご夫婦でいてほしい。そんな願いを込めて、パパ育休夫婦のママに伝えたいことをまとめました。

パパだってつらいよ

「パパは育休を取っただけで当事者意識がないんですよね」
パパは自分で考えて動いてくれない…そんなボヤキをよく聞きます。育児のスタートにおいて頼りなく感じてしまいますが、これにはやむを得ない背景もあるのです。

妊娠してつわりが始まり、おなかが大きくなって胎動を感じ、さらには陣痛や帝王切開を経て出産…。この経過で、ママはわが子の存在を日々じわじわと体感できることでしょう。しかしパパの体は何も変化しません。頭では愛おしく思っていても、目に見えず体で感じることができません。

さらに、コロナの影響で、パパが両親学級などに参加する機会がぐっと減りました。コロナが落ち着いて参加の機会が戻ったとはいえ、まだまだ少ないままです。また、妊婦健診、出産立ち合い、産後の面会…なども、コロナ前のように同行しづらくなりました。あくまで「パパは付き添い」であって、当事者の扱いを受けることはありません。

また、お友だちが出産してお祝いに駆けつける機会があるのは、圧倒的にママのはずです。出産直後のご家庭へ男性がお祝いに行くことは少ないため、男性は「新生児と会うのはわが子が初めて」ということが多いのです。

このようにパパとママでは、そもそものスタートラインや意識が大きく違います。
どれだけ想像力が豊かな男性でも、どれだけ妻を心から愛していても、赤ちゃんが生まれてすぐに「育児の当事者意識」を持つことが難しいのは、残念ですがしかたない面もあるのでしょうね。

パパ育休夫婦のママに伝えたいこと【助産院の現場から】_赤ちゃんを抱っこするパパ

具体的に話し合う機会を

このように、妊娠中は「付き添い」待遇だったパパが、突然「育休が始まったらパパも育児の当事者ですよ」となったことで、何をしたらいいか分からず戸惑うことも多いようです。
そして、パパがなにか行動しても、「全然わかってない」「そうじゃない」とイライラしてしまうママの声も耳にします。

パパには具体的に、「こうしてくれると助かる」を伝えてみませんか?
たとえば
■ 母乳を飲ませている間に皿を洗っておいてほしい
■ まとまった睡眠が取りたいから、その間は赤ちゃんが泣いても起こさないでほしい
…のように。

また、ママがしているようにはできないことも多いはず。皿を洗ったら生ごみが残ったまま、洗濯物を干したらシワシワ…のように。その時も同じように伝え続けてみませんか?

■皿を洗った後に生ごみも捨てておいてほしい
■洗濯物は干すときにしわを伸ばしてほしい
このように具体的に伝え続けるのです。

「めんどくさいから言わなくても察してほしい」というお気持ちもわかります。ママだってやることがいっぱいなのですから。しかし、具体的に伝えていく方が、これからは任せられるようになるはず。さらに、パパの家事トレーニングを出産前から始めておくのがおすすめです。

パパを過小評価しないで

ママから見て、パパに至らないところがあるとしたら、それは「すべてをしたことがないからわからない」に過ぎません。つまり「点」でしか育児や家事を見る機会がなかったために、「線」でタスクを考えた経験が少ないのです。

だとしたら、パパの育休中に「線でタスクを経験する」機会を増やしてみませんか?
パパが「オレがいないと家族が生活できない」と思うほどに、思いっきり頼ってみましょうよ。

たとえば、

  • 授乳以外の家事育児すべてをパパに一任する
  • パパに赤ちゃんを任せてママが長時間一人で出かける(母乳のママは数時間が限界かも)
  • パパが赤ちゃんをお風呂に入れている時は、ママは一切サポートしない
  • 赤ちゃんが泣きはじめてもママは動かない…のように。

「もしうまくいかなかったらと思うと怖くてできない」「なにかあったらどうしよう」と不安だとしても、どうかパパを過小評価しないで!と伝えたい。
パパがわが子を危ない目に合わせるわけがないのですから。

産後ママの話を聞いていると、「パパは言われたことしかやらない」「当事者意識を持ってくれない」「この前もこんな適当なことをされて」…と不満な声が多く出てきます。でもそういうママの話を聞いていると、そもそもパパが一人で育児をする機会すら作っていないことがほとんど。
「だって危なっかしくてパパは任せられないから」「うちのパパにはムリなんです」と、パパを過小評価しているんですよね。パパは任せてすらもらえていないのに、できないレッテルを貼られているとしたら残念です。だれでもひとりで判断する機会がなければ当事者意識を持てないのは当然ですから。

パパを思いっきり頼ってみたら、想像以上のセンスを発揮するかもしれません。ママが一人でできることはパパにもできるはず。「パパにはムリ」とパパを過小評価しないでくださいね。

パパ育休夫婦のママに伝えたいこと【助産院の現場から】_授乳するパパ

授乳をするのはママです

ただ、どれだけパパが当事者意識を持って取り組んだとしても、できないことがあります。それは母乳育児です。

パパ育休が増えてからというもの、乳腺炎やしこりといったおっぱいのトラブルが増えています。たとえば、母乳がじゅうぶん出ているにもかかわらずパパがミルクを飲ませていたり、または「シフト制育児」をしているために起こってしまうトラブルです。

「シフト制育児」とは、その名の通りシフト制でママと育児の時間を交代し、時間通りに授乳やおむつ交換を行う育児のことです。あるご夫婦は、深夜はパパのシフトだから母乳を飲ませられないと考えて搾乳を行い、その搾乳をパパが哺乳瓶で飲ませていました。でもこのやり方では、直接母乳を飲ませるよりも大変ですよね。

このような授乳をしているご夫婦のお話を聞いていると、ママが「パパが育休を取ったんだから授乳をさせてあげたい」と、パパへ気遣いしていることが多いのです。

ただ、ちょっと待って。そもそも授乳の主導権があるのはママのはず。
妊娠や出産、母乳育児は女性にしかできません。授乳については「ママ自身がどうしたいか」を考えたうえで決めてほしいと思います。

パパを教育する?え?

なかには、どうしてもパパの至らなさが目に余るママたちから、こんな厳しい声を聞くこともあります。

「うちのパパは何にもできないんです!育児しながらパパも教育するのは大変!」
「できてないからこうやるんだよって教えてあげたら不貞腐れるからめんどくさい」

怒り心頭のママからよく出てくるのは「パパを教育する」「パパに教えてあげている」という表現。

でも、ちょっと待って!
もしもパパから「オレが教育してやる」「オレが教えてやる」と言われたらどう思うでしょうか。「なんでそんな言い方されなきゃいけないの?」「文句があるなら自分でやればいいのに」と反発したくなりませんか?

ママが強く言えば言うほど、パパが「やりたくない」となってしまうのを見ていると、ああ残念だなあと思うのです。

パパ育休夫婦のママに伝えたいこと【助産院の現場から】_ありがとう

イライラしたときには「助けて」を

ではどんな伝え方をしたらいいのでしょうか。

そもそも育児中にイライラした気持ちになるのは余裕がないからですよね。
赤ちゃんとの生活では、考えることがいっぱい。ママに余裕がなくて頑張っているときに、パパがのんびりしていたり、察してくれないことが連続するうちに、ドッカ―ンと不満があふれ出すかもしれません。

そして、「もっと(育児や家事を)やってよ!」「オレだってやってるだろう!」と、売り言葉に買い言葉で大ゲンカに発展してしまったらつらいですよね。

そんなイライラしたときの「伝え方」の工夫をご紹介します。
「もっとやってよ!」というのは相手を責める伝え方です。責めるのではなく、甘えて「助けてほしい」と言ってみるのです。できたらパパの体に触れながら。
「助けてほしい」と言われて、「オレだって助けてるだろう!」と言い返されることはないはずです。

余裕がなくてイライラが積もったときこそ、怒る前に甘えてしまったほうがはるかにラクでノーストレス。ぜひお試しくださいね。

まとめ

夫婦から親となり、家族の形に変わっていくとのは、とても大きな変化です。夫婦のときには見えなかった姿を見て戸惑うこともあることでしょう。

男性が育休を取り、夫婦二人でじっくり育児ができる時間はめったにありません。
嬉しいこと、つらいことはなんなのかをお互いが理解できる機会となり、これからの将来10年後も20年後もずっと仲がいい夫婦であってほしいと願っています。

この記事を読んだあと、パパに向かって「あなたと結婚してよかった。大好きだよ」と言いながらハグしてみませんか?パパがどんな反応をするか楽しみですね。


筆者紹介

直井亜紀<span>(助産師・べビケアセラピスト さら助産院院長)</span>
直井亜紀(助産師・べビケアセラピスト さら助産院院長)
「頑張る育児から楽しい育児へ」
ラクチンな姿勢の母乳育児・うたうベビマ・赤ちゃんが泣きやむ抱っこやおんぶ・産後の家庭訪問などなど、「ママの笑顔を増やしたい!」をモットーに活動中。今までに関わった人数は約50,000人。新生児から思春期の性教育まで、長い線で関わり続ける活動をしている。今までの活動を通して、東京新聞・読売新聞・朝日新聞・日経新聞・NHK・Yahooニュースなど、マスコミ掲載多数あり。内閣府特命担当大臣表彰「子供と家族若者応援団表彰」・母子保健奨励賞・内閣府家族の日優秀賞など受賞。著書は「思春期のわが子へ伝えたい性のこと」「わが子に伝えたいお母さんのための性教育入門」など。
本質行動学エッセンシャルマネジメントスクールフェロー。合気道初段。
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