【助産師から】赤ちゃんとママにやさしい断乳・卒乳~めやすと極意~ 復職=断乳ではありません

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コラム
赤ちゃんにやさしい断乳と卒乳

赤ちゃん育児と産後のケアに特化し、地域に密着した活動を14年続けてこられたさら助産院院長の直井亜紀先生に教えていただく育児コラム第3弾です。

はじめに

あたたかくて、甘くて、いいにおいがして、ふわふわの優しいおっぱい。
子どもがおっぱいを求める期間は、長い人生の中のほんのいっときに過ぎません。

よく食べるようになった、歩き始めた、夜の授乳が大変、復職するから…などなど、断乳を考え始めるきっかけはそれぞれです。
しかし、「本当にやめてもいいのかな」「やめたら夜泣きするのかな」などと心配にもなりますよね。
そんなときにお読みいただきたい、赤ちゃんにやさしい断乳や卒乳についてまとめました。

子どもの興味の対象は広がっていく

子どもにとって、大好きな大好きなおっぱい。まるで心の安全基地のように包み込んでくれるおっぱい。おっぱいタイムを終える時期をママが決めるのが「断乳」、子どもが自ら離れていくことを「卒乳」といいます。

断乳とは言葉通り「母乳を断つ」ことなので、厳しいイメージが伴います。ある日突然に「はい、もうおしまいよ」と引き裂かれることで、宝物を奪われたような気持ちになるかもしれません。
これに反して卒乳とは、「おっぱいよりも、もっと楽しいことがある!こっちの方がいい!」と自ら卒業していくやめ方です。どちらが優しいやめ方かは説明するまでもありませんよね。

子どもにとっての楽しいことは、成長とともに変化していきます。お外遊び、お友だち、おもちゃ、絵本、見たことのない景色…。楽しいことが増えて、わくわく大冒険のように過ごしているうちに、「そういえばおっぱいを飲むのを忘れちゃった!」と飲まなくなっていく流れが理想的です。

たとえば、1歳を過ぎるころになると「おうちにいるときはおっぱい大好きだけれど、お出かけしたら飲まなくなる」ことが増えます。これは「昼間はおっぱいを飲むのを忘れるほどに楽しいことが多い」ということを意味します。

1歳を過ぎたら、絵本、おもちゃ、食べ物、公園や子どもが集まる場所へ出かける、電車やバスに乗る…など、おっぱい以外で知的好奇心を満たす機会を増やしてあげたいですね。

自然の中で遊ぶ子ども

そろそろ卒乳を迎えるめやす

では、卒乳の日が近づいているかをどう判断したらいいでしょうか。
分かりやすいのは以下のような発達段階のタイミングです。

  • スタスタ歩くことができるか → ヨチヨチではなく、スタスタ
  • おいしく食べているか →「食べさせたら食べる」ではなく、手づかみなど赤ちゃんの意思で食べている
  • 自分の気持ちを表現できるか→2語文程度の言葉(「ママ」「ないない」「ちっち」など)を話せる、または指を差して意思を伝えられる

つまり、行きたいところへ移動ができて、自分の意思を伝えることができるようになれば、「そろそろおっぱいから卒業できるよ」という目安です。年齢で言えば、おおよそ1歳半を過ぎるころですが個人差があります。

大事にしたいのは「その子自身」の発達段階なんです。

夜の授乳がしんどい!

「子どもに優しい卒乳がしたいけれど、でも夜の授乳がしんどくて耐えられない!」というママも多いのではないでしょうか。「早くおっぱいをやめさせたい」と希望するママのお話を聞いていると、「夜に眠れないからしんどい」という声をよく聞きます。夜はゆっくり眠りたいのは当然ですよね。

「夜の授乳がしんどい」と感じる方の中には、夜中も起き上がって授乳をしていたり、添い乳でママから差し出して飲ませている方が多いようです。

そろそろ、夜中は「勝手に」飲んでもらいませんか?
ママは横になって眠ったままでいいんです(横向き寝でも仰向け寝でもOK)。もちろん抱っこをしたり、おっぱいを差し出すことはしません。赤ちゃん自身が飲みたくなったときに、自らママの服をめくりあげて自由に飲んでいただく。まさにセルフ飲み(笑)。

授乳してるこども1

「えー!そんなことできるの?うちの子はやったことがない!」と思われるかもしれません。それは「できない」のではなくて、やり方を「知らない」だけなんです。ママが横になったままで、隣に座らせるように飲ませる練習をすれば、生後9か月にもなればセルフ飲みができるようになります。やり方さえ覚えれば勝手に飲んでくれるので、ママはぐっすり眠れて負担が減りますよ。

授乳してるこども2

復職=断乳ではありません

復職したら断乳しなくてはいけないと考えている方が多いようです。しかし実際は、復職してからも母乳は続けられます。

朝におっぱいを飲ませて、昼間はお仕事。そして、帰宅して夕方から夜中はいつも通りに授乳をして…と、「保育所に行っている時間だけ」「ママがお仕事をしている時間だけ」飲ませない授乳に変化していけばいいんです。
慣れるまでは昼間におっぱいが張ってつらいかもしれませんが、2~3か月もすれば次第におちついていきます。

どうしてもつらい時は搾乳という方法もありますよ。電動さく乳器 ハンズフリーは片手間に搾れるのでとっても便利!

断乳をすすめられたときに

子どもが1歳を過ぎると、「まだ飲ませているの?」「大きい子が飲んでいたら恥ずかしいわよ」などと言われることがあるかもしれません。断乳をすすめられると迷いますよね。

そんなときは、「(人前で飲ませるのは)そろそろやめよう」と考えてみませんか?
母乳育児とは、とてもプライベートなこと。例えるならば「夫婦で何回キスをしているか」と同じくらいプライベートなことなんです。
プライベートなことなのだから、おっぱいを卒業する時期を決めていいのはママと赤ちゃんの2人だけ。第三者の意見で決めることではないんです。
まわりの目が気になるようなら、おうちの中だけ、またはベッドの中だけなど、わが子とのイチャイチャおっぱいタイムを楽しんでみませんか?

抱っこするママと赤ちゃん

まとめ

1歳ごろになると、毎日が大冒険の連続です。
なんでも触れてみたい、なめてみたい、立ち上がってみたい…。動きまわることが楽しくて興味津々の毎日。

毎日が大冒険だからこそ、安心できる場所がほしい。やわらかくて、あたたかくて、いいにおいがして、おいしい味もする。そんなおっぱいは、赤ちゃんの心の安心基地です。

赤ちゃんがおっぱいを求めてくる期間は、長い人生のほんの一時期にすぎません。
平均寿命が80年以上と考えると、そのうちの何年だったのかはたいした違いではないはず。

成長に伴い、楽しいことやおいしいものが増えて、安心できる場所や人も増えて、夢中になっているうちにおっぱいを飲むことを忘れる……そんな日を迎えるのはいつでしょうね。卒乳する日は必ずやってきます。成人式で母乳を飲んでいる子はいないのですから。
いつかその日が来たら、母乳を与え続けたご自身の体のことも思う存分ねぎらってあげてくださいね。ママさん、お疲れさまです。

「断乳?卒乳?いつまで?」については、こちらの記事をお読みいただけたら幸いです。

筆者紹介

コラム筆者アイコン
直井亜紀(助産師・べビケアセラピスト さら助産院院長)
「頑張る育児から楽しい育児へ」
ラクチンな姿勢の母乳育児・うたうベビマ・赤ちゃんが泣きやむ抱っこやおんぶ・産後の家庭訪問などなど、「ママの笑顔を増やしたい!」をモットーに活動中。今までに関わった人数は約50,000人。新生児から思春期の性教育まで、長い線で関わり続ける活動をしている。今までの活動を通して、東京新聞・読売新聞・朝日新聞・日経新聞・NHK・Yahooニュースなど、マスコミ掲載多数あり。内閣府特命担当大臣表彰「子供と家族若者応援団表彰」・母子保健奨励賞・内閣府家族の日優秀賞など受賞。著書は「思春期のわが子へ伝えたい性のこと」「わが子に伝えたいお母さんのための性教育入門」など。
本質行動学エッセンシャルマネジメントスクールフェロー。合気道初段。
さら助産院HPはこちら

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