
生後5~6か月ごろはじまる離乳食。食べられるものが増えていく中で味付けをした方がよいのか戸惑うことはありませんか。今回は離乳食アドバイザーの海藤優希先生に「離乳食の味付け」について教えていただきました。

- 海藤 優希先生離乳食アドバイザー/離乳食・幼児食コーディネーター/食品表示診断士中級
- 娘の離乳食に向き合う中で、食の悩みや喜びを経験。「食」の大切さを実感し、資格を取得。これまでに離乳食やおやつの商品開発に携わった知識と経験をもとに、育児中の現在も子どもの「食べる力」や食育への理解を深めている。
はじめに
離乳食が始まると赤ちゃんは母乳やミルク以外の“食べ物”に初めて触れます。 最初はおかゆから始まり、少しずつ野菜や魚など、 素材の味を大切にしながら、徐々に食べられる食材や調理法が増えていきます。
その中でよく聞かれるのが、「味付けはいつからしていいの?」という声。今回は、離乳食の味付けはいつから始められるのか、さらに、調味料を使わない味付けのコツについて解説します。
離乳食ステップ別 味付けのススメ

離乳食の初め頃は味付けをせず、できるだけ薄味で進めるのが基本とされています。これは赤ちゃんの体の発達に配慮した大切な理由があります。生後6か月頃の赤ちゃんの腎臓は、大人の半分ほどの大きさで、機能も未熟。そのため、塩分の多い食事は腎臓に負担をかけてしまいます。また、この頃から濃い味に慣れてしまうと、成長後も味の濃い食べ物を好む傾向が強くなり、将来的な食習慣に影響を及ぼす可能性があります。
しかし、成長とともに食べられる食材や食事の回数が増えるため献立のバリエーションに悩みがちですよね。では、離乳食の味付けは、いつから、どのようにしたら良いのか、離乳食のステップ別に見ていきましょう。
01.離乳食初期(5〜6か月ごろ)
赤ちゃんが母乳やミルク以外の食べ物に慣れるための準備期間。素材の味を感じることが大切です。この時期に「味の基本」を経験することで、後の食習慣にも良い影響を与えます。
- ・味付けは一切不要。おかゆや野菜のペーストなど、単品でシンプルに。
- ・調味料は使わず、食材の甘みやうまみをそのまま味わわせましょう。
- ・赤ちゃんの舌はとても敏感。大人が「味がない」と感じるものでも、赤ちゃんには十分に風味があります。
02.離乳食中期(7〜8か月ごろ)
食べられる食材の種類が増え、食材の組み合わせで自然な風味を楽しめるようになります。
- ・だし(昆布・かつおなど)を使って、うまみを加えるのはOK。
- ・野菜同士の組み合わせで甘みやコクを引き出す工夫もおすすめ。
- ・調味料はまだ使わず、食材の持つ味を活かすことを意識しましょう。
03.離乳食後期(9〜11か月ごろ)
食べる量が増え、手づかみ食べが始まる子もいます。この頃からほんの少しだけ調味料を使うことができます。「大人の味に近づける」のではなく、「赤ちゃんが食べやすくなる工夫」を意識しましょう。味付けはあくまで補助的な役割です。
- ・味付けはほんのりが基本。塩分は極力控えめにしたごく薄味。
- ・だしの風味をベースに、しょうゆや味噌をほんの少量加える程度。
- ・甘みを足したいときは、すりおろした野菜や果物も活用。
04.離乳食完了期(12〜18か月ごろ)
「食べる楽しさ」を育てる大切な時期で食事の形も大人に近づいてきます。味付けに頼らず、見た目・香り・食感など五感を刺激する工夫が効果的です。調味料で味付けをする際は風味づけ程度もしくは薄味を心掛けるようにしましょう。
- ・大人の料理を取り分ける際は、味付け前に取り分けるのが理想。
- ・調味料は使えるが量は控えめに。大人の1/2程度を目安に味付けしましょう。
- ・さらに、作った後に「ちょっとしか食べなかった…」となると、疲れやすくモチベーションも下がってしまいますよね。
調味料に頼らない味付けのコツ

離乳食が進むにつれて、赤ちゃんに必要な栄養も少しずつ変化していきます。野菜・肉・魚など、様々な食材を組み合わせた献立を考える必要があり、「調味料なしでも美味しく食べられる工夫」はとても重要ですよね。赤ちゃんの味覚を育てるうえでも、調味料に頼らない味付けは大きな意味があります。ここでは、調味料を使わずに風味やおいしさを引き出すためのコツをご紹介します。
1.食材同士の組み合わせで“自然な甘みやうまみ”を引き出す
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かぼちゃ×玉ねぎ:加熱すると自然な甘みが引き立つ
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さつまいも×りんご:優しい甘みと香りの相乗効果
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にんじん×トマト:酸味と甘みのバランスが良い
素材の力を活かす調理は、赤ちゃんの味覚を豊かに育てます。また、 同じ「甘み」でも、野菜と果物では風味が違うので、組み合わせることで味に奥行きが出ます。
2.だしの力で風味を活かす
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昆布だし:まろやかなうまみで素材の味を引き立てる
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かつおだし:香りがよく、野菜との相性も抜群
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煮干しだし:カルシウムも補える栄養的メリットあり
離乳食には、塩分を含まない「水出し」や「薄めの煮出し」がおすすめです。
3.食材の調理法で味の感じ方を変える
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蒸す:甘みが強くなる(例:さつまいも、にんじん)
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焼く:香ばしさが加わる(例:かぼちゃ、りんご)
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煮る:うまみが溶け出す(例:玉ねぎ、大根)
ポイント:加熱時間や切り方でも味の印象が変わるので、少しずつ試してみると発見があります。
調味料なしでも満足!頼れるアイテム

前述では調味料に頼らない味付けを紹介しましたが、とはいえ、毎回の調理は手間がかかるもの。特に、忙しい日や下処理が必要な食材は負担になりがちです。そのようなときは便利なアイテムをうまく活用し、味のレパートリーを増やしていきましょう。
ふりかけ
細かい粒子状でおかゆやごはんになじみやすく、離乳食中期頃でも食べやすいのが特徴です。野菜や魚などの食材を手軽にプラスできるため、調理の手間を減らしつつ、食事の質を高めることができます。
きなこ
ふりかけと同様、細かい粒子状でなじみやすく食べやすいアイテムです。また、ごはんだけでなくパンやマカロニ(9か月頃から)とも相性がよく、献立に取り入れやすいでしょう。大豆はたんぱく質が多く含まれているのも嬉しいポイントです。
おわりに
離乳食の味付けは、「いつからOKか」よりも、「どう味覚を育てるか」が大切です。赤ちゃんの舌は私たちが思う以上に繊細で、豊かな感受性を持っています。だからこそ、素材の味を大切にしながら、少しずつ味の世界を広げていくことが、未来の“食べる力”につながります。焦らず、無理せず、赤ちゃんのペースに寄り添いながら、親子で食の時間を楽しんでくださいね。
出典元
・母子衛生研究会 赤ちゃん&子育てインフォ 「離乳食作りの基本」
・「きちんとかんたん離乳食」 中村美穂 赤ちゃんとママ社

