赤ちゃん育児と産後のケアに特化し、地域に密着した活動を15年続けてこられたさら助産院院長の直井亜紀先生に「赤ちゃんのウンチの特徴と対策」について、教えていただきました。
はじめに
赤ちゃんといえば「健康!」「快便!」のイメージがあるかもしれません。しかし実際は、赤ちゃんが便秘になることはよくあります。赤ちゃんが便秘になる理由は、月齢や授乳方法によっても異なります。
小さな体で「うーんうーん」と苦しそうにふんばっている赤ちゃんを見ると、何かしてあげたくなりますよね。そんな赤ちゃんのウンチの特徴や、便秘になる理由や対策について、また受診の目安などについてまとめました。
生まれたての赤ちゃんのウンチ
わが子が生まれて初めて出たウンチを見て驚いた方もいるのではないでしょうか。ウンチといえば、黄色~茶色を想像しますが、生まれてすぐのウンチは濃い緑~黒っぽい色をしています。まるでコールタールのようにこびりつきやすく、ネバネバしたこのウンチのことを「胎便」といいます。
わたしはわが子の胎便を見たときに素朴な疑問を持ちました。「このウンチの中身はなんだろう」と。
生まれたてで、まだ何も口にしていない時期になぜ大量のウンチが出るのか不思議ですが、この中身は、飲んだり食べたものの排泄物ではありません。お腹の中にいたときの、産毛や胎脂、また胆汁や血液などが含まれているのです。
そんな胎便は、ほとんどの子は約3日後には黄色い泥状ウンチへと変化していきます。母乳を飲んでいる子の方が消化が良いために早く排泄します。
母乳とミルクでウンチが違う?
赤ちゃんのウンチは「母乳を多く飲んでいるか」「ミルクを多く飲んでいるか」によって、形状やにおい、出るタイミングが異なります。
母乳を多く飲んでいる赤ちゃんのウンチは、まるで下痢のようにゆるゆるです。1日に10回以上出ることも珍しくありません。おならをしたらブリッとこぼれるように出ることもあります。これに対し、ミルクを多く飲んでいる子のウンチは粘り気があり、ツブツブを含むこともあります。回数も1日の平均は3回程度です(個人差はあります)。
また、においも異なります。母乳を多く飲んでいる子のウンチは甘酸っぱく感じ、腐敗臭がありません。これは母乳に乳糖を多く含むためビフィズス菌が活性化しているためです。
ときどき「母乳を多く飲ませるようになったら下痢になりました」とか、「ミルクを増やしたら便秘になりました」というご相談を受けますが、これは当然の変化で心配いりません。母乳を飲む量が増えるとウンチが急に緩くなったように感じるのは、腸内のビフィズス菌が活性化したためなのです。
赤ちゃんが便秘になる理由と対策
このように「母乳を飲んでいるか、ミルクを飲んでいるか」によってもウンチの柔らかさや出る回数が異なり、ミルクを多く飲んでいる子の方が便秘になりやすい傾向があります。
その他にも、便秘になりやすい理由と対策をまとめました。
飲み過ぎ
ときどき「便秘なのは栄養が足りないのでは」と心配する方もいます。実際に栄養不足は便秘になりますが、どちらかというとミルクの飲み過ぎで便秘になる子の方が多いと感じます。赤ちゃんはミルクを飲み過ぎるとお腹が張って、ウンチが出にくくなります。そのため「ミルクの量を減らしたら快便になった」ということもよくあるのが現状です。
飲み過ぎなのかを判断する目安として
- 1日当たりの体重増加が50g以上
- よくうなる
- 吐き戻しがある
これらの症状があれば、ミルクの飲み過ぎによる便秘の可能性があります。
ウンチを出すコツを知らない
生まれてすぐで消化器官が未発達なためもありますが、赤ちゃん自身が「うんちを出すコツを知らない」のも理由のようです。
わたしたち大人は、ウンチを出すにはどうすればいいのかを知っています。腹圧をかけ、肛門に力を入れて排便をしますが、赤ちゃんはまだ知りません。
顔を真っ赤にして、手足をバタバタさせ、泣き声をあげていたら、ウンチは出てきません。そこで、「肛門に力を入れるんだよ」と教えてあげる方法として綿棒刺激という対策があります。
これは、大人用綿棒(子供用は折れるため✕)を肛門に入れて、肛門を押し広げるようにする方法です。綿棒の先に潤滑用のオイルやクリームを塗ると痛くありません。まだウンチの出し方のコツを知らない赤ちゃんは、肛門に綿棒という異物が入る不快感から押し出そうとし、ウンチの出し方を学習します。スッキリさせたくて毎日してあげたくなりますが、赤ちゃん自身が「お腹が張る不快感」に気づいて出し方のコツを学習するためにも、3日に一度くらいが目安です。
水分が不足している
母乳を飲んでいる赤ちゃんの場合は、ママ自身の水分不足により便秘になることもあります。
ママ自身にも便秘症状があり尿の回数が減っている、また水分摂取量が1日2リットル以下で赤ちゃんも便秘であれば、ママが水分を多く摂ることで改善が期待できます。
また、生後6か月ごろになり離乳食が始まると、赤ちゃん自身の摂取する水分量が少ないことも便秘につながります。このときは、お茶やお水を多く飲ませてあげると改善します。
食物繊維が不足している
さらに、離乳食が始まった後であれば「食物繊維不足」のこともあります。すりおろしたリンゴ果汁、サツマイモのペースト、ヨーグルトなどが便秘対策に効果的です。
その他の対策
その他、お腹のマッサージや屈伸運動も便秘対策におすすめです。
お腹のマッサージとは、ウンチのたまる部位をなでるようにマッサージする方法です。ウンチがたまっているのは画像の位置で、押さえると小指の先くらいの太さの張りを感じます。ウンチが滞っている部位なので、なでるようにマッサージします。
よく「の」の字マッサージをすすめられますが、この時になでる「の」はおなかのずっと下の方だけです。大きく「の」の字を描くマッサージをすると、胃に触れるために吐き戻してしまいます。
そして、赤ちゃんの脚を曲げ伸ばしする屈伸運動のときは、「赤ちゃんのお腹に膝が当たる程度まで」行うのがコツです。グッとお腹に膝が当たることで、腸のもみほぐしマッサージになります。
また、ドラッグストアで買える便秘対策商品もいくつかあります。ただ、生後3か月未満のお子さんに使用するときは医師に相談してからが安心かもしれません。
受診のめやす
「たかだか便秘なんだから、そのうち出るだろう」と思うかもしれません。しかし、赤ちゃんの便秘やうんちの変化には、ときに病気がかくれていることもあります。
以下の症状は、早めに受診したほうがいいサインです。
- 下痢の回数が多い(水のような便が繰り返し出る)
- おっぱいやミルクが飲めない(食欲がない)
- 6時間以上おしっこが出ない
- 3日以上便秘が続き、綿棒刺激をしても出ない
- 赤色、黒色、白色のウンチが出た
中でも、赤ちゃんのウンチの異常で緊急性があるのは「腸重積」という病気です。
腸の一部がはまり込んで閉塞を起こす病気で、生後3ヶ月~2歳くらいのお子さんに起こります。腸重積は早期発見が重要で、24時間を過ぎると開腹手術になることもあります。
- 赤ちゃんが突然激しく泣きして5-10分で泣き止むのを繰り返す
- いちごジャムのような血便が出る
この症状があれば、緊急で受診したほうがいいサインです。
まとめ
「ウンチをする」ことは、生きていくうえでとても大切な習慣です。
しかし赤ちゃんは排便の経歴がまだ浅く、ウンチを出すとスッキリ気持ちいいことを覚え始めたばかり。同じように「便秘はお腹が張って苦しい」ことにも気づいていきます。便秘になったときはパパやママの手を添えつつ、気持ちのいい排便ができるように手伝ってあげたいですね。
最後に、赤ちゃんのときに便秘を繰り返した子は大人になってからも便秘習慣になるかというと、そんなことはありません。赤ちゃんが便秘を繰り返したとしても、「今だけだ、大きくなったら快便生活が待っている!」そう安心してくださいね。
筆者紹介
- 直井亜紀(助産師・べビケアセラピスト さら助産院院長)
- 「頑張る育児から楽しい育児へ」
ラクチンな姿勢の母乳育児・うたうベビマ・赤ちゃんが泣きやむ抱っこやおんぶ・産後の家庭訪問などなど、「ママの笑顔を増やしたい!」をモットーに活動中。今までに関わった人数は約50,000人。新生児から思春期の性教育まで、長い線で関わり続ける活動をしている。今までの活動を通して、東京新聞・読売新聞・朝日新聞・日経新聞・NHK・Yahooニュースなど、マスコミ掲載多数あり。内閣府特命担当大臣表彰「子供と家族若者応援団表彰」・母子保健奨励賞・内閣府家族の日優秀賞など受賞。著書は「思春期のわが子へ伝えたい性のこと」「わが子に伝えたいお母さんのための性教育入門」など。
本質行動学エッセンシャルマネジメントスクールフェロー。合気道初段。 - さら助産院HPはこちら