【歯科医】妊娠中の歯のケア・お口ケア・赤ちゃんのためにもケアしよう

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コラム

【歯科医】妊娠中の歯のケア・お口ケア・赤ちゃんのためにもケアしよう01

はじめに

妊娠は夫婦や家族にとって喜びや幸せを感じる生涯のイベントです。赤ちゃんを迎える様々な準備を通して絆も深まるでしょう。その反面、生活習慣が大きく変わることも多く不安や心配事も出てきますよね。妊婦や赤ちゃんの健康もその1つではないでしょうか。

実は、妊婦さんに歯周病があると「低体重児」「胎児発育不全」「妊娠高血圧腎症」などのリスクが高くなることが分かっています。今回は妊娠期のお口の健康について歯科医師の熊谷靖司先生にお伺いしました。

妊娠期に起きやすい口内環境の変化と歯のトラブル

妊娠するとホルモンのバランスが急激に変化することや生活環境も変化し、緊張感やストレスが増し、分泌される唾液量が減る傾向があります。唾液が減少することで様々なトラブルへ発展する可能性が高くなることをご存知でしょうか。

唾液が減少することで起こるトラブル
  • 唾液の役割である歯の再石灰化が起きにくくなるため虫歯のリスクが高くなる
  • 食べ物がお口に停滞することで歯周病や虫歯のリスクが高くなる
  • 唾液による自浄殺菌作用が減るので口臭がでてくる

上記のような唾液減少による虫歯や歯周病のリスクに加え、様々な身体の変化が起こることも注意が必要です。

  • 悪阻(つわり)により口腔清掃が困難になる
  • 食べる物・食べ方に偏りがでてくる
  • 悪阻(つわり)により胃が刺激され胃酸がお口へ戻ってくる

お口の変化への対処方法

妊娠によるお口の環境変化にどの様に対処したら良いでしょうか。少しでも良い環境を維持することは、自分だけではなく産まれてくる赤ちゃんにとってもとても大事なことです。

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悪阻(つわり)による口腔清掃困難への対応

妊娠初期は特に悪阻(つわり)の症状が強く、お口を十分にケア出来ない時期が続きます。歯ブラシを考えただけで気分が悪くなる事もあり対処に困る、というお話をよく聞きます。朝や食後などは特にその傾向が強いため、時間をずらす、あるいは少し前屈みになるなど、お腹や胃に負担がかからない体勢をとるなどおすすめです。
また、香料の入った歯みがき粉に抵抗がある場合は、歯みがき粉を使わずに歯ブラシを水で濡らして磨いてみるのも良いですね。歯ブラシをお口に入れることが難しい場合は、デンタルリンスなどを使うのもおすすめです。市販のデンタルリンスを使うよりも、歯科医院専売のフッ化物配合のデンタルリンスを使う方が虫歯予防になります。

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食べ物・食べ方への対処方法

妊娠している時期は食べ物や食べ方に偏りが出てくるため、虫歯や歯周病のリスクが高くなります。1度に食べられる量も減るため、一日を通して少しずつ食べ物をお口に入れる傾向がでてきます。特に炭水化物や糖分の入った食べ物・飲み物をお口に入れる回数(お口に留まる時間)が増えることで、虫歯菌の活動が活発化し、増殖することで新たに虫歯ができたり既存の虫歯が進行してしまいます。
食べたい物や食べられる物を変えることは難しいですが、リスクを理解し食事の回数や食べる物を考慮すると良いでしょう。

産科では妊婦さんの体重増加について以前に比べ指摘されることも多くなりました。食べられる物や食べ方はお口の健康だけではなく、安全に出産を終えるためにはとても大事な事です。食生活に関して、担当の産科の先生へ相談しながら工夫してみましょう。

胃酸が逆流する事への対処

悪阻(つわり)が続くと、胃液が食道を通りお口へ出てくることがあります。胃液は強酸のため、虫歯菌とは関係なく歯を溶かしてしまします。歯の表面のエナメル質が溶け粗悪なつくりになり、食べ物や細菌の付着が顕著になります。粗悪な状態は産後も残るため、虫歯や知覚過敏へ繋がることが懸念されます。
対処方法は小まめに歯ブラシやうがいを行うことが大事です。強酸である胃液をできるだけお口に残さない事がポイントですね。

妊娠時期別×気をつけること

妊娠初期(0〜3ヶ月)

悪阻(つわり)や体調の変化や精神的にもストレスを感じる方も多い時期ですね。 診療内容やお薬を考慮する必要がありますので医科,歯科、薬局へ行く際は必ず妊娠していることを伝えるようにしましょう。

この時期お口のケアでは次の事に気をつけましょう。

  • 悪阻(つわり)への対応
  • 歯科受診(口腔内チェック)
  • 歯科での定期的なプロフェッショナル口腔ケア*の開始
妊娠中期(4〜7ヶ月)

安定期に入り生活も落ち着く時期です。歯科治療が必要な際は歯科医師と相談し治療の計画を立て治療を始めましょう。 また口腔環境が悪化するため歯科衛生士による毎月の口腔ケアをお勧めします。

  • 偏食への対応
  • 歯科治療
  • プロフェッショナル口腔ケア*の継続
妊娠後期(8ヶ月〜出産)

出産日を考慮して歯科治療を進めるように担当歯科医師と相談すると良いでしょう。産後は赤ちゃんに付きっきりになるため自分のケアは後回しになりがちです。時間を見つけて出来るだけお口の中は清潔に保てるように気をつけましょう。 また、産まれてくる赤ちゃんのための健康知識について歯科医師や歯科衛生士に相談しましょう。

  • 歯科治療
  • プロフェッショナル口腔ケア*の継続
  • 産まれてくる赤ちゃんのための健康知識について知る

*プロフェッショナル口腔ケア
主に歯科衛生士が行う専門的な口腔ケア。歯磨き指導、歯垢の除去、歯のクリーニングなど。

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妊娠中の虫歯治療について

「妊娠中でも歯の治療は出来ますか?」と質問されることがよくあります。妊娠は全身と関わっていますので、歯科治療に関しても、まず産科の担当の先生と相談してください。産科の先生から歯科治療の許可がでたら、虫歯や歯周病の治療が始まります。妊娠初期と後期は応急処置程度にとどめるなど考慮は必要ですが、医科の産科ガイドラインでは妊娠期・授乳期の歯科治療は推奨していますので、安心して歯科を受診して下さい。

妊娠中の治療で気になる「麻酔」「レントゲン写真」「お薬」の3つについて説明します。

妊娠中の麻酔
  • 妊娠初期:麻酔は出来るだけ避けましょう
  • 妊娠中期:安定期に入り麻酔も可能になるため治療に適し た時期になります
  • 妊娠後期:麻酔は可能ですが、応急処置程度の治療にとどめることをおすすめします
  • ※妊娠中に使える麻酔薬には種類があります。産科や歯科医師と相談してください。
妊娠中のレントゲン撮影

歯科で行う一般的なレントゲン撮影は、胎児には影響は無いとされています。防護マットを使ってお腹を覆うことでより安全に撮影することが出来ます。

妊娠中の薬

胎児への影響が考えられますので、妊娠前から飲んでいる薬がある場合は 速やかに調剤薬局やクリニックへ連絡する事が必要です。また、市販薬も服用は中止し必ず製造元へ問い合わせしてください。

妊娠〜妊娠3ヶ月は神経や手、足、生殖器など重要な器官が作られる時期のため、お薬の服用は慎重な判断が必要となります。産科の先生の指示に従うようにしましょう。

妊娠4ヶ月〜出産は薬による影響は低いと言われていますが、安易に薬を服用せず、産科の先生に確認しましょう。

興味のある方は「妊娠と薬情報センター」のサイトがお勧めです。

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妊活時期からデンタルケアのすすめ

歯周病菌がだす「プロスタグランジン」という物質は子宮収縮作用があるため、「早産」や「低体重児」のリスクが約7倍にも上がります。またこの物質は不妊関連疾患の誘発や生殖活動の低下にも関連していると報告されています。そのため、妊活を行っている、あるいは始めることを検討している際は、男女とも歯科を受診し歯周病や虫歯を治療することをおすすめします。

妊娠してから治療を行うのではなく、妊活時期から虫歯や歯周病の病気を治し健康な状態を維持しておくことが、妊活・妊娠・出産を安全に行う第一歩です。

筆者紹介

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熊谷靖司先生
鶴見大学歯学部、東京医科歯科大学歯学部を経て、歯周病治療の第一人者若林健史医師のもとで勤務医となる。
2000年に東京都中野区で開業。
歯周病治療の中でも歯科治療全般の基礎となる「歯周基本治療」を得意とし、生涯健康を患者さんと実現することを目標に臨床を行っている。
著書:歯の話をしませんか?

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