
「足育(あしいく)」という言葉を聞いたことはありますか。足育とは、子どもの足を健やかに育てることを通して、体の使い方や発達、そして将来の健康を支えていこうという考え方です。このコラムでは、全2回にわたり一般社団法人歯並び育児®協会/足育アドバイザー®の増田さより先生に、足の発達の視点から見た幼児期の体づくりと、足を通して育まれる「支える力」「感じる力」について教えていただきました。

- 増田 さより先生一般社団法人歯並び育児®協会認定講師/足育アドバイザー®
- 子どものスポーツ指導に25年携わる中で、近年の子どもたちの身体の使い方に変化を感じ、「体の土台づくり」の重要性に注目。現在は歯並び育児®講座の認定講師に加え、スポーツトレーナー・赤ちゃん体幹トレーナー・足育アドバイザー®として活動。赤ちゃん期の体の発達が一生の姿勢やお口の使い方、歯並びにまでつながる—その大切さを多くの方に届けたいという想いで取り組んでいる。
足は“体の土台”、そして“感じる力”の入り口
近年、未就学児の約6〜7割に「浮き指」「偏平足」「寝指」といった、足の使い方に関する課題が見られると言われています。
浮き指
偏平足
寝指
足は、歩きはじめてから一生使い続ける体の一部。だからこそ、小さな頃にどんな環境で、どんな使い方をしてきたかが、その後の姿勢や動きやすさに大きく影響します。
では、今の子どもたちは、実際にどれくらい体を動かしているのでしょうか。

ある調査では、5歳児が1日に園でどれくらい動いているかを調べた結果、1987年には約1万2000歩だったのに対し、1993年には約8000歩、2000年には約4900歩、2007年には4000歩を下回るまで減少していることが分かりました。また、コロナ禍ではさらに活動量が減っていると予想され、子どもたちの体を動かす時間は年々少なくなっていると考えられます。

「まだ小さいから大丈夫」
そう思いたくなりますが、実はこの0〜6歳の時期こそが、足育のいちばん大切な土台づくりの時期です。特別なトレーニングをしなくても、日常の過ごし方そのものが、足を育てる時間になります。
足は“体を支える土台”
足は、体を支える土台です。家でいえば基礎の部分。基礎がしっかりしていれば、家全体は安定します。足も同じで、土台が安定していると、姿勢が整い、体を無理なく使えるようになります。
反対に、足の土台が不安定なまま成長していくと、姿勢が崩れやすくなり、疲れやすさや動きにくさにつながることがあります。
それが成長後、肩や腰の不調として表れるケースも少なくありません。さらに、体のバランスは顎の位置や噛みしめ方にも影響し、気付かないうちに歯並びに影響していくことがあります。足は体の末端ではなく、全身とつながる重要なスタート地点なのです。
足は「感じる力」を育てる場所
足の役割は、体を支えることだけではありません。
足の裏には、地面の硬さ・傾き・温度・凹凸などを感じ取る小さな“センサー”が無数に存在しています。

これらのセンサーは、脳や神経と連携しながら、体のバランスや姿勢を無意識のうちに調整しています。この感覚が十分に育つことで、
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転びにくい
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姿勢を保ちやすい
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体をスムーズに動かせる
といった力が自然と身についていきます。逆に、感じる経験が少ないと、体はうまく情報を受け取れず、動きがぎこちなくなりやすいのです。
裸足で遊ぶことが足育につながる理由
裸足で過ごす時間は、足裏のセンサーを目覚めさせる最良の機会です。砂、芝生、土、少しデコボコした地面。こうした刺激を足裏で感じることで、感覚と神経が育ち、体幹の発達にもつながっていきます。
現代の生活では、床が平らで、靴の中もクッション性が高く、足裏が刺激を受ける機会は意外と少なくなっています。だからこそ、裸足で「感じる時間」を意識的につくることが、足育の大切なポイントになります。

とはいえ、何か特別なことをする必要はありません。家の中で裸足になる、園や公園で思いきり遊ぶ。それだけで、ママが知らないうちに、もう立派な足育ができています。
足育は「がんばる育児」ではなく、「今ある生活を少し大切に見ること」。足元から育つ力は、子どもの体だけでなく、これからの毎日を支える土台になっていきます。
次回は…
第2回では、足から見えてくる子どもの体のサインや、毎日の生活の中で無理なく取り入れられる足育の関わり方についてお伝えします。
靴選びや履き方、外遊びのポイント、「これでいいのかな?」と迷いやすい場面での考え方もご紹介します。特別なことをしなくても、今日からできる足育を一緒に見ていきましょう。